予防について
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・ワクチンについて
先ず、予防については当院としては
『しっかり予防をしましょう』
というのがスタンスです。
また、なんとなく予防ではなく
予防する目的を理解したうえで
予防の実施をしていただきたく思っております。
予防には、メリットもあればデメリットもあります。
メリットは
・病気になりにくくなる
・除外診断をしやすくなる
・各種施設(トリミング・宿泊施設等)を利用しやすくなる
等
デメリットは
・コストがかかる
・投薬などの負担
・副作用の可能性
等
が挙げられます。
>> ワクチンについて <<
混合ワクチンは、
現在罹るであろう病気を予防するためのワクチンです。
ワンちゃんは,
5種混合ワクチンを基本に、
10種前後の病気を予防するワクチンの接種を勧めています。
当院では、
よくお出かけする・不特定多数のワンちゃんを接するなど
ライフスタイルによってワクチンの種類を選んでいただいています。
ネコちゃんについては、
3種類の病気を予防するワクチンが一般的です。
外に出ないから大丈夫ということではなく
ワンちゃん同様、定期的なワクチンの接種を勧めています。
以前は、猫エイズ(FIV)のワクチンなどもありました。
(色々と論議がされています)
近年は、海外でのワクチネーションガイドラインが作成され
3年に1度の接種も謳われています。
しかしながら、
国内では、宿泊施設等 施設利用の際に
毎年の接種証明の提出を求められることが多いことが実際です。
当院では、説明の上
毎年接種・自己責任での間隔をあけての接種等
皆様にお選びいただいております。
参考)犬と猫のワクチネーションガイドライン WSAVA
狂犬病ワクチンは、
ワンちゃんが狂犬病にならないためのワクチン
ではありますが
ワンちゃんでの感染を抑え、
ヒトに感染する事がないようにすることを
目的としています。
ですので、ヒトの為に
『 狂犬病予防法 』が制定されています。
この法律は厚生労働省・厚生労働大臣の元運用され
罰則規定なども定められています。
接種・登録は義務となります。
しかしながら、
狂犬病は1957年から国内での発生は認められていません。
我が国は、世界 196ヵ国の中で6か所しかない
狂犬病を認めていない地域(清浄地域)です。
ですが、世界では年間
50000人以上の方が狂犬病により命を奪われています。
狂犬病に感染し症状が認められた場合(発症)、
死亡率は99%以上になります。
症状も激しく、神経症状を呈します。
物を飲み込む際の刺激で、
喉の筋肉が痙攣を起こし誤嚥や痛みを伴うことより
水すら怖がる(水を飲むことを怖がる)
恐水症をおこすこともあります。
以上のことより、海外からの流入も想定し
ワクチン接種と登録が義務付けられています。
また、狂犬病は多くの哺乳類に感染する事が知られています。
蝙蝠などからも分離された事例もあります。
全ての野生動物のチェックをすることは不可能です。
この点からも、発生を認めなくても
ワクチンによる予防は大切であると考えます。
因みに、
イヌだけの接種は何故かと考える方もおられるかと思います。
狂犬病に関しては、
感染経路の90%以上が 犬由来だったためです。
当院では、
狂犬病ワクチン接種の際もう1点お願いしていることがあります。
海外に行った際、日本国内の感覚で
動物に近づかない事をお願いしています。
海外での狂犬病の発生状況等・またもしもの時の為に
厚生労働省・外務省・国立感染症研究所の
リンクをお示しいたします。
・厚生労働省 狂犬病について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/
・外務省 海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2016C034.html
・国立感染症研究所 NIID 狂犬病とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/394-rabies-intro.html
参考)厚生労働省 狂犬病について
外務省 海外安全ホームページ
国立感染症研究所 NIID 狂犬病とは
イヌのフィラリア症(犬糸状虫症)は、
フィラリアと呼ばれる糸状の寄生虫によって
引き起こされる病気です。
フィラリアは蚊を介して伝播され、
感染したイヌの体内で成長し心臓に住み着きます。
感染したイヌから血液を吸った蚊が、
他のイヌを刺すことにより感染が広がります。
感染初期では症状は不明瞭ですが、
心臓への寄生虫の寄生により
・咳
・呼吸異常
・運動がしづらくなる
・喀血
・腹水貯留など
心不全やショックなどの症状を呈します。
また、寄生虫が心臓から肺に移動することで
血管内異物に対して体が激しく反応することで
ショックを起こすことがあります。
心臓内の寄生虫の駆除が成功しても、
負担のかかった心臓を元の状態に戻すことは
難しいのが現実です。
定期的な駆虫薬(予防薬)の服用で、
蚊によって運ばれてきたフィラリアの幼虫を
やつける事で予防を行うことが一般です。
この為、蚊が出てくる季節
気温が安定して14度以上になる時期に
定期的な駆虫薬(予防薬)の服用をお願い
しています。
・最低でも5~12月
・最近では3~12月
(ノミダニ予防薬との合剤が主流になりつつあるため)
・通年予防
(予防前の検査が不要になります)
予防の前には、
ワンちゃんでは、血液検査でフィラリアの成虫
が体内にいないかチェックをします。
体内に成虫がいた場合
フィラリアの成虫が幼虫を大量に生みます。
この状態で駆虫薬を使うと、
大量の幼虫が体内で死ぬことで
ワンちゃんがショックを起こす
場合があります。
また、心臓に住み着いてしまった場合
稀に成虫が駆除され、肺に流れ着き
血管を詰まらせることで
ショックを起こす事があります。
感染後2~3か月で、フィラリアは血管内に移動します。
この状態での予防薬(駆虫薬)の使用は、
投薬時のリスクが上がります。
当院では、検出感度は落ちますが
2か月間の駆虫薬(予防薬)の
飲み忘れがあった場合、
念のために再度のフィラリアチェックを
強くお勧めしています。
フィラリア症は、日本名:犬糸状虫症で犬の病気ですが
ネコちゃんでも見られることあります。
止まらない咳等、心臓の病気を疑った際
エコー検査などで見つかることが稀にあります。
基本的に、猫の体内はフィラリアに対して
生育しにくい環境であるとされており
稀に、認められる病気と言えます。
ノミダニ予防と同時に、フィラリアを駆除する薬が
入ったスポット薬(首の後ろにつける外用薬)
等もありますので、一緒に予防すると安心です。
ただし、ワンちゃんの様に駆除薬使用前の
検査が不正確なため、リスクがあることも
お話しておきます。
他は、蚊の駆除が有効とされます。
近年だいぶ様変わりした川口市ですが
昔から竹を使った和竿の名産地である川口は
竹林が比較的多い地域です。
蚊が出やすい地域であると言えます。
フィラリアはじめ感染症は、
自動車の運転ではありませんが、
大丈夫だろうではなく
感染するかもしれない
という認識が大切です。
ノミやダニの寄生もワンちゃん・ネコちゃんでは問題になります。
ノミ・ダニの寄生については、
寄生による皮膚の疾患・膿瘍の形成など他にも
・アレルギー
・ほかの感染症の罹患
( バベシア症・瓜実条虫 等)
・動物の生息域での ノミダニの繁殖
等など
多くの問題を引き起こします。
他の感染症と違わず
他の仔にうつしてしまうことも
大きな問題です。
外に出ないからという意見もありますが、
近隣に野生動物(野生のネコ 含む)
等がいた場合、感染のリスクは無くなりません。
フィールドワークやお庭の手入れなどの際に
自宅に入り込むこともあります。
また、自宅周囲 物置や屋根裏等が
野生動物の住処になっている場合もリスクは上がります。
近年では、ダニが運んでくる
SFTS(重症熱性血小板減少症候)
等も注目されています。
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
NIDD 国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/3143-sfts.html
また、北海道でも同タイプの
ダニが運んでくるウィルス
・エゾウイルス
北海道ホームページ
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kst/kak/78883.html
が、発見されています。
SFTSでは、感染後 重大な事象につながった例も報告され、本年では
ヒトからヒトへの感染も報告されています。
駆虫・予防薬の定期的な使用を行うことが重要です。
それ以外にも、キャンプなどで自然に近づく際は
ワンちゃん・ネコちゃん以外、
ご自身も寄生されない用注意ください。
素足や袖の短い洋服着用での、
叢への侵入などは感染リスクを高めます。
フィールドワークをする方は、
洋服の袖などを長靴に入れ、
その上からガムテープ等で養生したりと
気を使ったりもしています。
人よりも節足動物の方が
多いことを忘れないでいただけたら幸いです。
ワンちゃん・ネコちゃんが寄生されてしまった場合は
動物病院へ
ご自身が寄生された場合は
ヒトの病院に受診することをお勧めします。
傷跡が残ったり、新たな感染を起こしたりする可能性があります。
そうなる前に予防することが大切です。
動物病院や、サロンさん・ドックランや宿泊施設の利用など
他のワンちゃん・ネコちゃんに接する場に行く場合の
エチケットと考えていただければ幸いです。